安倍内閣が最重要政策の一つに掲げる「地方創生」に向け、42都道府県が「地方人口ビジョン」をまとめた。東京を除く41道府県が独自推計した2060年時点の人口で、人口減対策を施しても、増加すると見込むのは沖縄だけ。あとは10年比5〜44%の人口減を予測している。しかし、その推計も短期間で合計特殊出生率が上昇したり、人口流出が止まったりすることが前提になっており、実現性に疑問の声も上がっている。
「もともと、うちは出生率が高いですから」。沖縄県の担当者は胸を張る。14年の出生率は全国一の1・86で、国の1・42を上回る。ビジョンではさらに35年までに2・30に上昇させ、移住者増も含め、60年の推計人口は10年より2割多い168万人とした。
ただ、沖縄だけが例外で、他の道府県は、のきなみ減少すると見る。秋田県は10年比で44%、青森、岩手、山形、福島、和歌山、島根、山口の7県が30%台の減少を見込むが、こうしたビジョンにも「見方が甘い」との声が上がる。
「はなから実現をあきらめている目標では」。6月の静岡県議会。木内満県議(35)が指摘したのは、ビジョンの前提の出生率だった。
現状のままなら60年に239万人になる人口を300万人超にとどめる。そんな目標を掲げるビジョンは、1・50(14年)の出生率を、長期的にみて出生数と死亡数が均衡する2・07に20年に上げるのが前提だ。
しかし、2・07は静岡でいえば1970年代前半の水準で、それを5年間で回復させる想定。別の議員からも実現性を問われたが、県幹部は「結婚、出産、子育てを総合的に支援することで達成したい」などと答えるだけで、具体的な根拠は示さなかった。
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